アメリカひとり旅日記3

9月16日(日)  ロスモチス 晴れ 〜 クリール 曇後雨

 

 夜、寝ていると銃声のような音がしたので、ビビってそっと窓を開けてみたら、何のことはない花火だった。9月16日はメキシコの独立記念日だったのだ。昨日の自転車レースもマラソンもその為のイベントだったらしい。そんなこんなで今朝は4時起きの5時チェックアウトだったのでよく眠れなかった。安宿「ロス・アルコス」を後にしようとフロントに行ったら真っ暗だった。「やられた。ドアが開いてないじゃん」と思うやいなや、真っ暗なロビーのソファーからフロントのニイチャンがむっくり起き上がって来てびっくりしてしまった。とりあえずチェックアウトできた。チワワ鉄道の出発に間に合う。

 

 、昨日のうちに確認しておいた高級ホテル「サンタ・アニータ」の前のタクシー乗り場に行った。まだ夜は明けきっていなかった。タクシー乗り場に着いた時、1台も停まっていなくて焦ったが、間もなくタクシーがやってきて乗ることができた。俺はタクシーに乗らない主義だが、今回は早朝と言うこともありしょうがない。20分ぐらい暗闇の中を走るとチワワ鉄道の駅が見えてきた。タクシー代は60ペソと思ったよりも安かった。しばらくロビーで待っていたら5:30amに改札。そして乗車。なかなか快適そうなシートだった。席は指定で窓側。隣は誰もいなかった。

 

 ートに座って発車を待っていると日本人の女の子2人が乗り込んで来た。たぶん昨日見かけた女の子たちだったと思った。「こんちは!」って挨拶したら、ちょっと驚いた様子だった。こんなところで日本人に会うとは思ってもいなかったのかも?6:00am、列車は夜明け前のロスモチスの街をすべりだした。1時間も走ると、食堂車の準備ができたとシェフがベルを鳴らしながらやって来た。こんなに朝早くじゃ食欲もなかったが、とりあえずどんな感じか見たかったので食堂車に行ってみた。さっきの日本人の女の子2人も2人用テーブルで食事をしていた。テーブルは4人用しか空いていない。「一人で4人掛けの席もなんだかなぁ・・・。」とボソッと俺が言ったら、彼女たちは「じゃ、いっしょに」と言って4人用のテーブルに移ってくれてた。でもって、3人で朝食となったのであった。メキシコに入ってから出会いがなさ過ぎると思っていたし、日本語を話していなかったのでうれしかった。女の子たちはキエさんとユカリさんで神戸の大学生だった。

 

 食が済んだ後も2時間ぐらいテーブルにねばって話をしていた。客車のシートで外を眺めるよりも食堂車の方が眺めがいい。それよりも客車で一人で外を眺めているには風景が変わらなすぎるし列車の旅が長過ぎる。しばらく話した後、3人ともデッキに出て景色を眺めていた。窓の開かない客車とは違って、ここは体に風を感じられた。ダイナミックな風景もリアルに感じられた。たまに目にゴミが入って痛かったが客車にいるよりデッキにいた方がだんぜん楽しい。

 

 車は峡谷をゆっくりと進んで行った。途中、きれいな湖とか鋭い岩肌とかが車窓を流れて行った。ユカリさんとキエさんもこの後エルパソに向かうと言うので「地球の歩き方」を見せてあげた。俺の去年のエルパソ体験から、ユースに行ってアントニオに会ったら楽しいことや、誰か仲間を見つけてレンタカーでホワイトサンズカールスバットに行ったら楽しいと言うようなことを教えてあげた。2人とも車酔いで少し気持ち悪そうだったけど・・・。俺は今日は終点のチワワまで行かないで途中のクリールで降りる。彼女達はチワワまで行く。

 

 ばらくすると列車はディビサデロ駅に停車した。ここで15分の停車時間がある。降りてみると展望台があってカッパ−キャニオンが見下ろせた。「地球の歩き方」ではグランドキャニオンを凌ぐ〜と書いてあったが、グランドキャニオンの方がすごいような気がした。ただグランドキャニオンは谷を見下ろす感じだが、この展望台は谷から見上げるようになっているからかもしれない。展望台のまわりではタラウマラ族の人達が民芸品や食べ物を売っていた。子供たちが「ペソ、ペソ」と言いながら涙目で小銭をねだってくるのがイヤだった。列車の中で知り合った南アフリカ共和国から来たニイチャンとカッパ−キャニオンをバックに写真の撮りっこをした。

 

 車に戻るとすぐに発車した。さっきまで乗っていたリタイアした年配の人達のツアー客はここで1泊するのに降りたらしい。そう言えば、そのツアー客の一人の中国系のおじいさんがそう言っていたような気がする。なんでも、ツーソンの旅行会社が主催していてまたツーソンに戻るらしかった。それにしても列車は2時間ぐらい遅れているようだった。ディビサデロを出て1時間してクリールに到着。キエさんとユカリさんともここでお別れだ。俺も南アフリカのニイチャンもここで降りた。そして彼女達を見送った。クリールは山の中の町にしては思ったよりもちゃんとしていた。駅には宿の客引きがたくさんいたが、ある程度の客と話がまとまると急にいなくなってしまった。煮え切らなかった俺と南アフリカのニイチャンの2人が駅に取り残されたのであった。静かになった駅で1人の少年が「カーサ・マルガリータ」と言いながら俺達を誘っていた。200ペソなら「まぁ、いいか」と言うことで俺達は歩いてカーサ・マルガリータに到着。

 

 ーサ・マルガリータは一部改装中だったが部屋も新しく、昨日の宿とは雲泥の差だった。朝夕食付き、毛布のあるベッドお湯の出るシャワー。でも、ひとつだけ問題があった。宿泊客は全員英語圏の旅人ばかり。みんなが集まっている所にタバコを吸いに行ってもみんな英語で討論していて話し掛けるような雰囲気ではなかった。さっぱり英語が聞き取れない。自己紹介してもらっても名前すら聞き取れない。今まで会った人達は俺に分りやすいように簡単な英語で話してくれていたんだと痛感してしまった。俺の被害妄想かもしれないが、この宿では英語がまともに話せてアウトドア派の人間じゃないと仲間になれないような気がした。

 

 まらないので部屋に戻って窓から街を見ていたら日本の田舎の風景に似ているような気がした。夕食を食べにダイニングに行ってみたが席は埋まっていた。しかたがないのでシャワーを浴びてからもう一度ダイニングへ行った。パンが旨かった。ビールを買って飲みながら、なんとか話に加わろうと思ったが、やっぱりこの雰囲気には馴染めなかった。ここでは英語が話せないと肩身が狭くて卑屈になってくる。英語圏の人間たちで結束していて英語ができない人間はかまってもらえない感じだった。2泊するつもりだったが、明日ツアーに参加する金もないし、明日はチェックアウトして旅を先に進めようと思う。


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