アメリカひとり旅日記3

9月15日(土)  ロスモチス  晴れ

 

 6時頃、フェリーのシートで目を覚ました。シートに座り直してボーっとしていた。他の乗客はコーヒーを買って飲んでいる。トイレに行ってみると異臭がして何度も吐きそうになった。船酔いで吐くならまだしも、こんなことで吐くのは嫌だったので我慢した。7時頃にデッキに出てみると、もうトポロバンポ港の中をフェリーは進んでいた。朝日が眩しい。ゆっくりと接岸してゆく。8時に下船。ここではロシアンルーレット式の荷物チェックはなかった。昨夜、乗船する時は俺の前のおばちゃんで赤ランプがついていた。

 

 ェリー乗り場を後にしてロスモチス行きのバス乗り場へ。待っていたバスには屋根の上に荷物があふれ返って中も満員だったので次のバスを待って乗った。相変わらずタクシーの客引きが鬱陶しかった。30分ぐらい田舎道を走るとロスモチスのセントロに到着。ラパスよりも大きな街だった。まずは宿探しだ。「地球の歩き方」の地図を頼りに歩いたがなかなか見つからない。なんとか「ホテル ロス・アルコス」を探し当てた。見るからにヤバそうな雰囲気。入口もよく分らないし、ガラスにもスモークが貼ってあって中がよく見えない。中に入るとかなり狭いロビーで、その手の商売の女2人がタバコを吸っていた。俺に何か言ってきたが、スペイン語だったので返事もできなかった。太い鉄格子が入ったフロントで聞いたら、部屋は空いていた。80ペソ(¥1000以下)。

 

 階の部屋に通されるとボロボロ。鍵も怪しい。部屋の壁には落書きだらけ。窓も小さく金網があってある。なんか囚人になったような気がした。部屋の隅にポツンとあるベッドのシーツが新しいのが救いだった。トイレとシャワーは共同のモノが外にある。外は屋根のない空間だ。ドアは板を打ちつけただけで隙間から外が見えた。そして、とうとう俺が恐れていた便座なしのトイレでウンコをする時がきたのだ。便器にケツが触れないように中腰だ。これはかなり辛い体制だ。もちろんトイレットペーパーはない。日本から一巻持ってきたトイレットペーパーに救われた。が、メキシコのトイレは水圧が低く詰まりやすいので、拭いた紙は便器のわきのごみ箱にそのまま捨てる。これはちょっと抵抗があるがそうするしかないのだ。床には新聞紙が無造作に置いてある。これで拭けってことか?シャワーは当然のように水しか出ない。しかもシャワーと言うよりも、蛇口から水が降ってくるだけのモノだった。ここの宿は今までしてきた旅の中でワースト1かも?でも、もうこんなことでは驚くこともなくなった俺がいた。それに1泊だけだし、なによりも安い。

 

 りあえず街に出てみた。あした乗る予定のチワワ鉄道のチケットを手に入れなければならない。旅行代理店に行ってみることにした。が、またもや方向音痴が出て迷ってしまった。それにしてもロスモチスは暑すぎ。街全体がアメ横状態。高級ホテル「サンタ・アニータ」の1階にある旅行代理店に入ってみると英語が通じた。わりと簡単にクリールまでの1等車のチケットが手に入った。557ペソ。

 

 が減ったので昼飯を食おうとアメ横状態の街を探し歩いた。屋台はあるものの外から見る限り俺の知っているメニューがある店がない。歩き回って疲れたので渋谷のセンター街のガキみたいに道端に座り込んでタバコを吸っていた。この街でそんなことをしてるヤツはいない。通行人たちは変な目で俺を見て行く。「よし、次に見つけた店に入ってしまえ!」と決心して歩き始め、屋台風の店に入った。適当に壁に書いてあるメニューを指差してオーダー。たぶんトルタスだと思う。なかなか旨かった。なぜか酸っぱいセブンアップも飲んで11ペソは安い。飯を食った後は何もすることがないんで宿に戻って少し昼寝をした。

 

 後5時に目を覚ました。ムッチャ暑い。いまのうちに洗濯をしてしまえば夜までに乾きそうな勢いだった。中庭の水道から出るお湯のような水で手洗いした。洗濯が終ると夕涼みがてら街に出た。通りを封鎖して自転車レースをやっていた。さっきからパトカーのサイレンがうるさかったのはそのせいだったのだ。急に、明日は早朝出発しなければならないので宿の入口がその時に開いてるかどうか心配になって戻って聞いてみることにした。宿のニイチャンはロビーのソファーに寝転がってテレビを見ていた。「マスク・オブ・ゾロ」のスペイン語バージョンをやっていた。これってティファナからラパスへのバスの中でも上映していたのと偶然にも同じだ。コマーシャルになったところでニイチャンに明日の事を英語で聞いてみたが、スペイン語しか話せないらしく困った。が、なんとなく明日の朝は大丈夫な気がした。

 

 飯を探して再び街に出た。自転車レースの本部みたいなところで日本人のバックパッカーの女の子2人組を見かけた。「地球の歩き方」を見ながら歩いていたので、すぐに日本人と分かった。いま着いたばかりで宿探しをしてるようだった。声をかけようかと思ったが、メキシコのこんなところまできて日本人に声をかけられるのも悪いかなと思ってやめておいた。が、逆に日本人に滅多に会わないような場所だから声をかけておくべきだったのかもしれない。

 

 っきょく夕飯は宿の近くのタコス屋に入った。ミクスタスってのをオーダーしてみた。オーダーをとってくれた女の子が何か言っていたがスペイン語なのでわけが分らなかった。戸惑っていると適当に食べ物を持ってきてくれた。酸っぱいコークも飲んで25ペソ(¥280)。またもや安い。宿に戻ると真っ暗なテラスの椅子に座りしばらくの間通りを眺めながらタバコを吸っていた。通りには長距離バスが何台も通り過ぎて行った。新しいバス、めっちゃボロいバス。俺は一人でメキシコのこんな所まで来てなんとか旅ができている。どこに行っても生きてゆけるかも?なんてことを考えていた。


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