アメリカひとり旅日記2

5月10日(水)  アトランタ 晴れ

 7時に起きた。今日はストーンマウンテンに行くので8時に久野君メンチェンとコモンルームで待ち合わせだ。2人ともまだ来ていない。ここのユースは毎朝、無料のコーヒーとドーナツが食える。でも、ドーナツがもう1個しか残っていない。ひとり2個までなのだが・・。とりあえず、食っておいた。そうこうしてる内に久野君メンチェンが現れた。でもって、買い置きしておいた冷凍のピザがあるのを思い出して3人で食べた。でも、このピザオーブンで焼かなきゃならないのにレンジでチンしてしまったものだから、ドロドロだ。まっ、食えりゃ何でもいいさ。追加のドーナツも出てきたことだし。

 40分ぐらい地下鉄に乗ってE7駅へ。そこからバスに乗り換えだ。バス停でタバコを吸っていたら、スーツ姿の黒人男性に注意された。よく見るとNO SMOKINGのサインがあったのだ。しかし、その黒人紳士は笑顔だった。その紳士はニッコーホテルに勤めているとバスの中で言っていた。アメリカ人はダメなことはダメ、とハッキリ言えるところがすごいと思う。日本じゃ他人の事なんかおかまいなしだもんな。

 そんなこんなでバスは郊外の終点に到着。さて、ここからどっちに行ったらいいものか?とりあえず下車する時にドライバーから言われた方向に3人で歩いてみた。途中、俺達に時間を尋ねてきた黒人に、ストーンマウンテンヘの道を逆に尋ねてみた。俺達の歩いている方向は正しかった。5分ぐらいでストーンマウンテンパークに到着。公園は広くてどうしていいか分らない。俺達はとりあえず汽車に乗ってみた。ここの汽車もアンティーク調でなかなか趣がある。

 そして山頂へ行くロープウェイの駅まで行った。ここでチケットを買わなければ山頂へは行けない。俺は全てのアトラクションを楽しみたかったから$16のパスを買おうと思った。だが、貧乏学生のメンチェンは、お金がないのでロープウェイの片道切符しか買わない、と言う。せっかくいっしょに来たのに可哀相だと思い、俺達日本人2人がおごってあげる、と言ってみたがメンチェンは頑に断わった。山頂に行く前にメシにした。ここのバーガーショップは観光地なので高かった。俺達がホットドッグを食っているのにメンチェンミルクだけを買って持参のスニッカーズをかじってるだけ。なんか辛い。でも、変におごってあげても彼のプライドが傷つくのでやめておいた。

 5101.jpgでもって、ロープウェイで山頂へ。途中、岩に刻み込まれた有名なレリーフの上を通過した。デイビス指令官リー将軍ジャクソン将軍のレリーフだ。頂上に到着。一枚岩のハゲ山だ。白い岩肌からの照り返しがけっこうきつい。遠くにはアトランタのダウンタウンがうっすらと見えている。観光客を捕まえて俺達3人の写真をそれぞれのカメラで撮ってもらった。そして意味もなく山頂を小走りしてみた。岩の感触が足の裏に感じられて気持ちがいい。久野君が別行動してどこかへ消えてしまった。メンチェンは岩に座って「地球の歩き方」を眺めていた。メンチェンは日本語を少し勉強しているらしく本が少し読める。同じ漢字圏だから理解しやすいのかも知れない。彼は「地球の歩き方」の詳しい解説に感心していた。「旅行の時は今度は日本語のガイドブックを買うよ。」と言っていた。久野君が見つかったので山を降りることにした。

 しかし、ここからはパスを持っている俺と久野君の日本人2人メンチェン別行動しなければならない。メンチェンは歩いて下りるつもりらしい。しかたがないので、8:00pmにユースで会うことにした。夕飯をメンチェンが見つけた安いスパゲッティ−屋で食う為に。

 久野君はロープウェイで麓まで下りてリバーボート乗り場を目指した。俺達はストーンマウンテンをなめてかかっていたのだった。歩いても歩いてもたどり着かない。イラストマップでは狭そうなのに・・。かなりデカイ公園だ。パイプオルガンの音のする方に歩いて行くと、道に迷って川に突き出した場所にある塔にたどり着いた。この塔全体が巨大なパイプオルガンになっていた。まわりは森になっていてかなり幻想的な光景だ。

 5102.jpg道を引き返し、やっとの思いでリバーボート乗り場に着いた。乗船。アメリカの自然らしい風景が広がる。川面に映りこむ森林。まるで昔見たセーラムのCMのような風景。風も気持ちいい。もうすっかり夏の気分だ。

 その後、公園内を無料で回っているトラムを発見。初めからこれに乗ればよかった。トラムに乗ってプランテーション(大農園)時代の建物を見に行った。奴隷達の家や農園主の家などがある。農園主の家はかなり贅沢な造りだ。でも、各自の寝室に便器がそのまんま置いてあって、ベッドの側でウンコをしていたとは興味深い。俺だったら絶対イヤだ。外でした方がマシだ。そのウンコを奴隷が片付けるのも悲しすぎる。プランテーションエリアのおみやげ屋でルートビアを買って飲んだ。このビンがアンティークっぽくて気に入ってしまった。そのまま日本に持って帰りたかったが荷物は増やせない。帰りは再びストーンマウンテン鉄道に乗りバスと地下鉄でユースに戻った。途中、バスが線路と平行して走った。貨物列車が延々と続いている。1km位つながっていたのかも知れない。

 8:40pmメンチェンと再会しスパゲッティ−を食いに3人で行った。ドリンク、サラダ、パンが付いたスパゲティ−のセットが$6〜9とかなりリーズナブルだ。メンチェンもかなり気に入っていたらしく、「Good Deal!」と連発していた。食事中の会話はもちろん英語なのだが、相手の言っていることは半分は理解できるのに、自分が言いたいことは英語にならない。かなり悔しかった。前回の旅では言葉が通じないこと自体を楽しんでいたが、今回の旅は言葉が通じないことに悔しさを感じるようになった。出会った仲間達ともっといろいろなことを話してみたいのに。

 ユースに戻ってからは毎晩恒例になった玄関の外でのタバコ。久野君と話をしているとワシントンDCに住んでいる日本人のヤストモさんがやって来た。3人でいっしょにガソリンスタンドまでビールを買いに行った。戻ってまたもや玄関前の階段に座り込んでビールを飲みながら話した。つまみはアトランタ初日に買ったステーキの残りだ。久野君サイコロステーキに作ってくれた。メンチェンもやって来て話に加わった。5103.jpg

 ここのユースは開放的でいい。スタッフの女の子達や他の宿泊客達もここの階段にやって来る。その中にアフリカのセネガル共和国出身の男もいた。このセネガル人は何を言っても否定しやがる。かなりの曲者だ。でも、憎めないんだな。自分に正直なヤツだ。ストーンマウンテンに行って来た話をすると、「日本にはもっとすごい富士山があるじゃん?」とか、「アメリカに来て、みんながスゴイ、スゴイって言ってるけど、本当にそう思うの?自由、自由って言うけど、ただそれだけじゃん。」などど、するどいツッコミが入る。彼が言いたかったのは「もっと自分の国に誇りを持ってもいいんじゃないの?」ってことかも知れない。確かに俺は自分の国について何も知らないんじゃないか?それでアメリカが好きだ、とか言っている自分が少し恥ずかしくなった。

 そんなこんなで、みんなで飲みながら俺のアメリカ最後の夜は更けて行くのであった。今日で実質的には、アメリカひとり旅が終る。明日は帰国だ。前回の旅に比べたら格段に進歩した旅だったと思う。なんと言っても人との出会いに恵まれた旅だった。途中からユースホステルに泊まることにしたのが正解だった。みんなすごいヤツらばかりだった。みんな懐が深くてあたたかいヤツらばかりだった。

 日本人って何なんだろう?アメリカって何なんだろう?少し解りかけたような気がする。自分と身内の事だけしか考えられない大部分の俺達日本人。ただ、いっしょに旅したヤツらは違っていた。まともな仕事は誰もしていない。でも、みんな気楽なガンバリ屋ばかり。もっとデカイ自分になりたくて旅にでたヤツ。憧れを現実にする為に旅にでたヤツ。自分探しの旅にでたヤツ。

 ルーズでいい加減なアメリカ。嫌なことは嫌、いい事はいいとはっきり言えるアメリカ。でも、みんなあたたかい。みんな気持ちに余裕を持っているような気がする。「もっと気楽に生きてみなよ。そんな深刻になっても何も解決しないよ。なんとかなるさ。」って言われたような気がした。俺はたぶん、いや、きっとまたアメリカに戻って来るだろう。


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