アメリカひとり旅日記2

5月5日(金)  ニューオリンズ 晴れ

 グレイハウンドバスの中は眠れなかった。一晩中ドライバーが前の席のオバチャン達と喋り続けたり大声で笑うものだからうるさくて寝つけなかった。「夜中だから静かにするように」と自分で車内アナウンスをしておいてこの様だ。ダイゴ君も閉口していた。

 そんなこんなで早朝6時過ぎにニューオリンズのバスディーポに到着。ここのディーポははアムトラックの駅といっしょになっている。まずは今夜の宿を確保しなければならない。ディーポの中にあるホテルインフォメーションの電話を使ってダイゴ君が電話をかけまくってくれた。目当てのユースホステル「Marquette House」は満室。その後もかけまくってもらって、やっと見つかった。ツインの部屋でひとり$39。写真はフレンチクォーターになっているが地図で調べてみるとかなり離れている。一応はユースホステルと書いてあるが・・。5051.jpg

 そこへ日本人の女の子が一人でやはり宿を探しにやって来た。彼女も電話をかけまくったが、けっきょく俺達と同じ宿になった。でも彼女は$49と言われたらしい。やっぱりジャズフェスティバルがあるせいで宿代が高くなっているようだ。3人いっしょに宿に向かうことにした。地図で通りだけを確認して番地だけを頼りに歩いた。ディーポからはかなり距離があった。途中、病院を越えてハイウェイをくぐるとMOTELの看板が見えた。夜は治安が悪そうな場所だ。モーテルの前を通り過ぎようとすると中から人が呼んでいる。ここらしい。でも、ここはユースホステルじゃないよな?ディーポの広告はほとんどインチキだった。

 チェックインを済ませて、ダイゴ君は3階の部屋、女の子は2階の部屋になった。部屋はかなり汚かった。バスタオルは汚れて真っ黒。天井には蜘蛛の巣が張っている。とりあえずシャワーを浴びた。その後、3人でジャズフェスティバルのメインコンサートである「レニー・クラヴィッツ」のチケットを手に入れることにした。女の子は仁美さんと言い、ニューヨークに住んでいて今月5年ぶりに日本に帰るらしかった。その前にひとり旅をしていたのだった。チケットの入手は仁美さんの英語力に頼ることにした。モーテルの前の公衆電話で電話をしてもらった。かなり待たされたが、けっこうあっさり3人分のチケットを採ることができた。ラッキーだ。

 とりあえず、今夜の予定と宿が決まったので、そのままフレンチクォーターへ繰り出すことにした。ニューオリンズのダウンタウンはビルが立ち並び、思ったよりも都会だった。が、フレンチクォーターに近づくに連れてヨーロッパ風の建物になっていった。仁美さんのリクエストもあって「カフェ・デュ・モンド」へ行ってみることにした。彼女はお腹が減っている様だった。通りを歩いていると路面電車を見つけたので、どこへ行くのかも分らないまま乗り込んだ。が、このまま行くと郊外へ行ってしまいそうだったので途中で降りた。そしてミシシッピ川を目指して歩き続けた。ほとんどが住宅地で観光客があまり通らないような所だった。ミシシッピ川沿いで電車に乗りムーンウォークまで行った。

 電車を降りてすぐに「カフェ・デュ・モンド」を発見。けっこう人が並んでいて大盛況。ここの名物のカフェオレベニエ(フランスのドーナツ)を食べていると突然のスコール。かなり激しく降っている。カフェの外では黒人がトランペットを吹いている。ここからは3人別々に行動しよう、と言うことになり再びここで6時に待ち合わせすることになった。雨が小降りになったところで行動開始。

 5052.jpg俺はとりあえずブードゥー教の博物館に行ってみることにした。あまりにこじんまりした入口で人もいなかったので、少しフレンチクォーターをぶらついてから入ってみた。入口を入るとブードゥー教のグッズを売っている。$7払ってレジの横の入口から博物館の中へ。普通の民家を改造して作った博物館だった。2部屋あっていずれもブードゥー教の儀式に使う本物のガイコツとかムカデとか人形とかキワモノのオンパレードだ。奥の部屋から中庭に出ると、何やら儀式を始める準備をしているらしく祭壇が飾り付けられている最中だった。誰もいなくなったところで隠れて写真を撮った。

 そこを出た後、昼飯でも食おうと思ったがこの辺りは一人で入れそうな所が無い。しかたがないので、プリザべ−ションホールと言うジャズのライブをやっている昔からある小屋を見に行った。当然昼はライブをやっていないので閉まっていた。そこの前で一人の男がギターを弾きながらブルースをやっていた。すごくカッコよかったのでしばらく聞き入ってしまった。チップをあげてその場を後にした。

 あても無くしばらく歩いていると、いつの間にかジャクソン広場に来ていた。ここでもバンドがジャズを演奏している。疲れたので座って休んでいた。すると、なんと、チャリンコじいさんを発見。このじいさんもやっぱりニューオリンズに来ていたのだ。じいさんはユースの部屋がとれたらしかった。電話をかける時間によっては部屋が確保できるらしい。俺達が電話をしたのは早すぎたのだ。しばらく話をしていると、偶然、仁美さんがやって来た。またもや3人で話をしていると、今度はダイゴ君が登場。6時の待ち合わせ前に全員集合していた。しかも違う場所で。すごい偶然だ。

 そしてチャリンコじいさんを除いて俺達3人は昼飯を食いに行った。全員ニューオリンズ名物のガンボをオーダーしたが、あまりにも量が少なかった。仁美さんは一人でこれまた名物のハリケーンカクテルを飲んでいた。メシの後は3人でミシシッピ川のほとりでボーっと話をしていた。音楽の話題になって、俺が「ストレイキャッツ」ファンだと言うと、仁美さんもファンだった。日本でも少ない「ストレイキャッツ」ファンにアメリカで会えるとは驚きだ。

 その後もすることが無かったので、今夜のコンサート会場のルイ・アームストロング公園まで行ってみた。チケット売場はまだ閉まっていたので、その前に3人で座り込んでかなり長い間話をしていた。直射日光が暑かった。7:00pm頃チケットブースが開いて3人分のチケットをゲット。$45。チケットも手に入ったことだし、再びフレンチクォーターに戻って角のレストランで夕飯だ。別々のケイジャン料理をそれぞれオーダーした。安くて量があって満足だった。

 腹を満たしたのでいよいよコンサート会場ヘ。屋内のスタジアムが会場だった。セキュリティーチェックがあった。カメラは持ち込めるのに飲み物を取り上げられたのは納得がいかなかった。まだ人が集まっていなかったので、初めはステージに近いダンスフロアーで見ようと思っていたが、人が集まって来ると俺達よりもみんな背が高いので見えなくなることに気がついた。しかも、みんな手にはビールを持ってタバコも吸っている。ここにいたら危険なので2階の客席に移動。アメリカのコンサートは酒もタバコもO.Kなのには驚きだ。斜め前のオッサンはマリファナまで吸っている。5053.jpg  レニー・クラヴィッツ

 9:00pm過ぎ。前座のバンドCOUNTRY MOUTHのライブが始まった。ドラムがリードボーカルをとるオヤジバンドでなかなか楽しめた。11:00pm。レニー・クラヴィッツ登場!生はけっこう迫力があった。しかし、俺は昨夜のグレイハウンドバスからほとんど寝ていなかったので少し居眠りをしてしまったのであった。レニーのプレイもよかったけど俺が一番感動したのは、俺達の席からダンスホールが見渡せて、そこにいるすし詰め状態の人達を見たことだ。日本のコンサートだったらほとんどが日本人の観客なのに、ここにはあらゆる人種がいる。こんな光景はブラウン管を通してしか見たことが無い。コンサートは深夜1時に終った。

 帰りはほとんどの人達が車だったが、俺達3人は歩き。この辺りは治安が悪いと聞いていたが、それほどは恐さを感じなかった。ただ、途中でよったコンビニのカウンターが全面防弾ガラスに被われているのを見て、やっぱりそうなのかと思った。モーテルまでの道を歩き続けたがハイウェイの外側は危険と言うことになっているので、バスに乗ることにした。深夜でも1時間に1本は出ているはずだ。ホームレスだらけのバス停で待っていたが、俺達の乗りたいバスはやって来なかった。タクシーを捕まえてみた。走り出してからドライバーにモーテルまでいくらか尋ねてみると、初めは$3と言っていたが、ひとり$3と言うので降りた。ふざけんな!このままではらちが開かないので意を決して歩くことにした。ハイウェイの下の交差点まで来た時に、2台止っている後ろの車からマシンガンらしいものを撃っているヤツがいる。ヤバい、撃たれるかも?と思って、マジにビビった。しかし、それはペイント弾だった。前の白い車が真っ赤に染まっていた。とりあえず一安心。


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